その20 小賢しい世界
ちょっと前の話になりますが、巨人軍の村田捕手がヒーローインタビューで人種差別用語を使って問題になりました。野球系や差別系の掲示板なんかでは、結構話題になってましたねえ。ご存知ない方に簡単に説明すると、「バカでもチョンでも」という言葉を使ったそうです(私は実際に見てないんですけどね)。
また、私の好きなマンガに、「釣りキチ三平」という作品があるのですが、この作品は一向に再版される気配がありません。最近流行りの文庫版にもなってませんし、アニメの再放送もありません。理由は簡単で、タイトルに差別表現があるためです。
他にも「ちびくろサンボ」が絶版になったり、「ダッコチャン」が発売中止になったり、カルピスのトレードマークが変わったり、差別的な表現には必要以上にメスが入っているみたいです。
ここは「週刊ディズニー知ったかぶり講座」で、「差別用語講座」ではないので細かい説明は避けますが、まあ、人種差別や、部落差別を臭わせる様な発言はすべて自己規制の対象になる、という納得のいかない世界がここにあります。その言葉がどういうニュアンスで使われたか考えないでただ言葉だけを規制する「言葉狩り」が横行しています。「『チョン』だけを扱って『土人』を扱わないのは片手落ちだ」なんてテレビで言おうものなら、永久追放になっちゃいます。
「てめえここはディズニーのページだろ差別のウンチクはヨソでやれよこのタコ」というコメントが聞こえてきそうなのでこの辺にしときますが、なんでこんな話をしようと思ったかと申しますと「その感覚だと、ディズニーランドって差別の塊だよな」というお話がしたかったのです(注1)。
なんといっても人権派の偉い方々が目をそむけるのは、「ジャングル・クルーズ」です。土人が未開の地で大騒ぎです。「10人に1人は帰れる」なんて言ってます。テレビなら番組打ち切り、雑誌なら廃刊、発言なら弁明会見モノです。なぜ問題にならないのか、不思議なくらいです。
「ウェスタンリバー鉄道」もまずいですね。インディアンの暮らしが、未だに17世紀のままです。偏見の塊ですね。ましてや直後に恐竜です。まるで『はじめ人間ギャートルズ』ですな。コレも打ち切り-廃刊-弁明ラインでしょう。
「魅惑のチキルーム」もまずいかな?アフリカの文明に、近代化が感じられませんから。「アフリカってこんな所」って感覚を植え付けてる!
お?じゃあ、「カリブの海賊」も北欧民族差別になるかな?いや待てよ、黒人表現がダメなら白人表現や黄色人種表現もマズイはず、ならば人間が出てくるアトラクションやショーは全部差別になるのか?ならば『イッツア・スモールワールド』は差別しか存在しないじゃないか!!『リトルマーメイド』のアリエルは、足に障害を持つ人への差別表現か?なにせ「ちびくろサンボ」は主人公が黒人だっただけで絶版だから、怪しいぞ!ドナルドダックは水兵差別か?そもそも同じイヌなのに、グーフィーは人間の暮らしをしてて、プルートはペットだ!それにミッキーマウスは指が4本じゃないか!差別だ差別だキャー差別よ発禁よ廃刊よ絶版よーーー!
ディズニーランドの世界って、アメリカ人が長く抱いていた偏見に基づいて作られている部分が多いなあ、と思うのです。ディズニー映画はやっぱりこの偏見に基づいて作られてきたし、それに基づいて作られた本家ディズニーランドも、さらにそれに基づいて作られた東京ディズニーランドも、やっぱりこの偏見が存在するんですよね(もちろんそれだけじゃなくて、単なる表現上の演出だったりすることもあるんですが)。
じゃあ、これがマズイから直すべきか、というと、全然そんな必要はないと思うのですよ。どんな表現にも、作った本人にしか分からないにしろ、本来の表現の意図があるはずなんです。それが差別に基づいている表現だったり本当に誰かを卑下する表現であることもありますし、差別意識がまったくない表現である事もあるんです。
「食人人種****人の生活をリアルに再現した、新アトラクション登場!」なんてのがあれば、当然問題になりますし、排除すべきなんです。でも、「これって本当に差別表現か?」と思う表現は簡単に直したり、なくしたりすべきじゃないと思うのですよ。表現手段には、独創性と、それが生まれた文化と、それを作ってきた歴史が複雑に絡みあってこめられていると思うんです。アメリカ人の偏見も、それ自体が文化であり、それ自体に歴史があって、ここにあるんじゃないかなあ、と。正しくない表現がすべて問題、というのであれば、創作活動なんて出来ないじゃないですか。
あなたはミッキーマウスの指を見て、障害者差別だと思いますか?
(注1)
実際、映画『アラジン』は差別発言があるためにオープニングの曲「Alabian Nights」の歌詞が映画とビデオで差し替えになりました。何がひっかかったか、というと「Where they cut off your ear if they don't like your face (あんたの顔が気に入らなけりゃ、あんたの耳をそぎ落とす奴らが住む所だ)」の部分です。ここはアメリカで直した部分なので、日本の規制とは関係ないのですが。
また、『ノートルダムの鐘』は、アメリカでは「The Hunchback of Notre Dame (ノートルダムのせむし男)」なのですが、日本で公開されたとき、英語版のタイトルが「Bell of Notre Dame (ノートルダムの鐘)」に変わっていました。日本語のタイトルはともかく、英語のタイトルまで変えるか?(これってアメリカで2つのバージョンが用意されてたのかなあ?)